東京地方裁判所 昭和41年(行ク)3号 決定 1966年3月28日
申立人 田島大二郎
被申立人 府中刑務所長 外一名
訴訟代理人 片山邦宏 外三名
主文
1 本件申立てを却下する。
2 申立費用は申立人の負担とする。
理由
申立人は、申立人が昭和四〇年一〇月一二日小野清一郎、朝倉京一共者「監獄法」の購入願いをしたのに対し相手方府中刑務所長が同月二〇日これを不許可にした処分および申立人の家族から同年一一月一四日差し入れられて右相手方において領置中の「監獄法概説」と題する書物につき申立人が同年一二月一月下付願いをしたのに対し右相手方が同日これを不許可にした処分について、それぞれ効力および執行の停止を求めている。
しかしながら、右購入願いおよび下付願いの各不許可処分は、それぞれ申立人が右購入願いおよび下付願いをもつて申請したことがらの実現を拒否したにすぎないのであつて、たとえ右各不許可処分の効力を停止してみても、申立人から右購入願いおよび下付願いが出された状態が回復されるにとどまり、それ以上に右購入願いおよび下付願いが許可された状態が作り出されるわけのものではないのである。したがつて、右各不許可処分の効力停止によつては、申立人が右各不許可処分によつて生ずると主張している回復の困難な損害(すなわち、もし小野・朝倉共著「監獄法」の購入が許可されないと、申立人が提訴中の行政訴訟の追行に必要な法律知識をその各段階において得ることができないばかりでなく、時機を失すれば晶切れ、絶版等のためその購入ができなくなるおそれがあり、また、家族から差し入れられた「監獄法概説」の下付を許可されないと、申立人は右と同様に右行政訴訟の追行に必要な法律知識を得ることができないばかりでなく、これを差し入れてくれた家族の善意をも享受できないということ)を避けることはできないものといわなければならない。それ故、右各不許可処分につきその効力の停止を求める本件申立ては、その緊急性を欠き失当として却下を免れない。また、申立人は、右各不許可処分の執行の停止を求めているが、右各不許可処分についてはその性質上執行上いう観念を容れる余地はないから、執行の停止ということも考えられず、したがつて、右の申立ても失当として却下を免れない(なお、申立人は右各不許可処分の効力および執行の停止を国を相手方としても求めているが、国は右各不許可処分をした行政庁ではないから右申立てにつき当事者適格を欠くのというべく、したがつて、本件申立てのうち国を相手方とする部分はこの点においても失当である。)よつて、本件申立てはいずれもこれを失当として却下することとし、申立費用については民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり決定する。
(裁判官 高林克巳 仙田富士夫 石井健吾)